レポート:「やさしい日本語」のインパクト-外国人政策勉強会21


2017年9月15日(金)19:00よりスタートした第21回外国人政策勉強会は、講師にやさしい日本語ツーリズム研究会 事務局長・株式会社電通の吉開章(よしかいあきら)氏をお迎えし「『やさしい日本語』のインパクト」をテーマに講演をいただきました。主な内容は以下の通り。

研究者ではなく民間の実践者であるという立場、また「やさしい日本語」は日本人が身につけるべき外国人対応に有力な言語の一つであるという考え。

やさしい日本語は、その成り立ちから一般的な認識として、国内外国人向けの情報発信手法であり、主な用途は、1)減災のため、2)平時の情報提供のため、である。しかし吉開氏が提唱するのは、一般日本人が外国人と会話するための手法であり、なかよくなるための「やさしい日本語」である。

おもてなしにおいて「英語」は共通言語なのかという疑問がある。これに対し、デンマーク、フランス、ドイツ、スイス、日本、韓国などの学生の集合写真を見せながら、そこに写る学生の共通言語は何かといったクイズ。「アメリカに観光に来たあなた(日本人)が片言の英語で買い物。丁寧な対応をする店員が最後に「シェシェ」と言って見送った。どう感じましたか。」といった思考実験を事例に、外国人とのコミュニケーションにおいて、共通言語はないという結論を明示。そこから、やさしい日本語ツーリズムという発想が生まれた。

アジアからの観光客が増加するなか、互いに通じる言語は何か確率的な問題が出てくる。毎年、国際交流基金が発表する海外の日本語学習者の数は、現在学習機関で学ぶ学習者の数であり、趣味の学習者やこれまでに学習した経験のある方の数ではない。そこで、電通と国際交流基金が昨年12月にアジアのいくつかの国を調査した結果、実際に日本語を学んだことのある人の数は現在日本語を学ぶ人数の約10倍に上ることがわかった。ここで、おもてなしは日本語でもいいじゃないかという仮説が裏付けられた。

また、訪日観光客がどこに行くかを決める時、日本語学習経験者がリードすることが多く、地方に旅行する外国人は何度も訪日する観光客で、彼らは日本語を話したいと思っていることもわかってきた。やさしい日本語で外国人に話す観光地が出てくると地方が変わるのではないか。

「やさしい日本語ツーリズム研究会」を立ち上げた経緯には、上記の理由と、吉開氏の郷土で台湾からの観光客が増加している柳川市の協力、東京外国語大学荒川洋平教授と日本語講師育成を手掛けるヒューマンアカデミーとの連携によるところが大きい。

柳川市の観光地で接客にあたる市民に、やさしい日本語の講習を行い、「やさしい日本語の、おもてなしバッジ」を作成して実践してきたことが数多くのメディアでも取り上げられ、NHKのニュースで取り上げられた映像を紹介。留学生や働いている外国人は、地元に住めば、生活者だが、観光地に行けば、観光客であるという視点も提示。

やさしい日本語ツーリズム研究会の実践は、なかよくなるための「やさしい日本語」の一例であり、おもてなし以外の場面でも活用ができるもの。なかよくなるための「やさしい日本語」の目標は、自分の気持ちを、分かるように伝えること。そのポイントは、1)一文を短く言う。2)はっきり言う。最後まで言う。3)敬語は使わない。「です・ます」を使う。4)和語を使う。漢字の言葉はできるだけ避ける。5)カタカナ英語とオノマトペはできるだけ避ける。という5点。コツとして、だれが何をするかはっきりさせ、子供でもわかる言葉で話すことと説明。

外国人を観光や生活者としてみれば、英語は共通語ではない。日本語が通じる外国人は意外に多い。個々の日本人が実践可能な言語として英語よりも有力である。そして、「やさしい日本語」のインパクトとして、1)全員が参加できる。2)高齢者の生きがいと雇用につながる。3)英語じゃなくてよいという気づきと、日本語の調整という訓練でできるようになる。4)累積の日本語学習者は増加する一方。5)楽しく外国人と話しだしたときの社会的インパクトが大きい。

吉開氏には以上のような講演をいただきました。また、質疑応答では具体的な質問が多く、明日から実践するためにどうすればよいのかという観点に対して、研究を待つ必要がないこと、だれでもすぐに始められること、そして吉開氏がそのような人には協力を惜しまないことを伝え、お開きとなりました。

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